官能小説書くの超むずい

 

官能小説は難しい

文庫本という形で他者様の官能小説を一度も読んだことがない身でいうのはおこがましいとは思うが、官能小説を書くのは大変に難しい。大変で難しい、とも。Weblioでは、「官能的」を「官能にかかわるさま。 また、肉体欲望をそそるさま。 肉感」と説明している。官能小説は「肉体的欲望をそそる」、つまり人の心を盛り上げてやれなくてはならない。人である読者ならわかっていようが、心が盛り上がっているときに水を差されると、その気分は一気に萎縮する。映画のクライマックスでカーチャンが自室の扉を開けて無神経に何か尋ねてきたり、映画館で、世界が自分たちを中心に回っているという思い込みから抜け出せないでいる類のDQNグループと同じスクリーンに当たってしまったり…

品のなさは萎えに繋がる

で、官能小説の中で何がその「水」に該当するのかというと、校正ミスと、言葉選びだ。校正はダブルチェックや読み返しで極力減らすとして、言葉選び。早い話、同人誌無断転載ページのタイトルのような、ド直球の名詞を連ねて作った文章が小説を埋めていたら確実に幻滅する。おちんちんだのおまんこだの、言語道断。品のないシチュエーションというのを強調するためにあえてキャラクターにしゃべらせる場合でもない限り、絶対に小説中に書けない。書いてしまえばそれは官能小説ではなくギャグになる。だから別の言葉で表現せねばならない。

かといって

同じ表現を多用しては、やはりくどさが付き纏う。極端な例として、官能ではないがsyamuの書いたゾッ帝を挙げる。

大男は鼻歌を歌いながらバンのトランク開け、トランクの中からポンプアクションショットガンを取り出す。
ポンプアクションショットガンの銃身を見つめ、片目を瞑ってポンプアクションショットガンを構える。
大男は麻里亜に振り向き、ポンプアクションショットガンに弾を装填してゆく。

気持ちが悪い!読んでいられない!

これを修正してみる。

「大男は鼻歌を歌いながらバンのトランク開け、中からポンプアクションショットガンを取り出す。
その銃身を見つめ、片目を瞑って構える。
男は麻里亜に振り向き、弾を装填してゆく。」

この文の中で重複する名詞を消してみた。他にも突っ込みどころはあるがひとまず。名詞の重複を消すだけで、ぱっと見問題のなさそうな文にはなった。

変なものを例示してしまったが、表現を重複させないという制約、不文律は、人の心を動かすうえで大きな枷となる。官能小説ではこれがかなり厳しいのだ。

では僕が今までに行った「おちんちん」の言い換えを、前後の文と一緒に並べてみよう。(そもそもおちんちんという言葉が表すものを文章中に描写すること自体避けているので少ない。しかし依然よく出てくるものなのでここに挙げる。)

「生きた男のそれは、」「肉体を極限まで蹂躙していた矛」「これが、あの子を仕留めた槍?」「毎度毎度、よくもまあ自分の涎でえらいことになっているところにこの貧相なモノを入れられたものだ。」「いきり立つリビドーの権化(未公開の原稿より)」「大の大人の体重を乗せたそれが、」

目的語や主語として省略することが多い。そうなどしてできるだけ名詞そのものを極力使わないようにしていたりもする。

こうして単語の重複を減らしていった結果、「異なり形態素率」がえらいことになる。

語彙とそれをうまく引き出す力をかなり要求されるので、文章力の養成にはもってこいかもしれない。そういえばそんな話、絵描きの方でもあった。絵の上達には叡智絵を描くといいとか。

疲れたので一旦ここまで。