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麻薬と向精神薬を同時に使った話

今回の入院でまた麻薬を使った。

ASDのこだわり的には、麻薬の麻を麻でなく痲と表記したいが、僕は学習するASDなので、読者にとって痲は違和感しかないということをきちんと予想できる。現代日本では麻。学習した。

麻薬を乱用するクソバカノータリンの人類カーストド底辺のゴミのせいで麻薬のイメージは最悪だが、適切に使えばめちゃくちゃ便利な薬だ。日本ではもっぱら鎮痛薬として使われているが、タイでは咳止めとしてアヘンがコンビニで売られている。その鎮痛作用はすさまじく、日本で手に入る咳止めの感覚で使った日本人がよく驚いているようだ。たぶん出張で頻繁にタイへ行っていた父も使ったことがあると思う。今度聞いてみよう。

今回使ったのは前回と同じフェンタニル。モルヒネより鎮痛作用の強い合成麻薬だ。”酔”う作用よりも鎮痛作用のほうが強いので、乱用者曰く「キマらない」とのことで不評。

1月2日。前回は膵臓炎で今回は原因不明の腸骨筋の内出血でできた血腫。内出血だけで800mLくらいの血を失った。ということは800mLもの体積の異物が短時間で右腎臓の下にできたのだ。これが右大腿筋とその周辺の感覚に繋がる神経を押し潰した。アセトアミノフェン(バファリンなどに入っている鎮痛薬)を静脈に直接ぶっ込んでもまったく効かない。これ以上の効果的な処置は麻薬以外にないと判断し、処方してもらうため痛い痛いと騒いだ。堪えられぬ痛みにのたうち回ると余計に足が痛むので動くこともできず、遅い1秒を数え続けて数日後、ようやく主治医がフェンタニルを処方してくださった… らしい。もう最後の方は覚えていない。

白いラベルに赤文字で麻薬と書かれている。これを1時間に2mLずつ、中心静脈カテーテルから静脈注射していく。

それでも痛みは完全には引かず、10段階評価で8から5くらいになった程度。この痛みのせいでリハビリが1ヶ月行えず、2022/04/07現在も右大腿筋の神経の回復に手(脚)を焼いている。痛みの度合いを確認してはその濃度を上げる、の繰り返しは副作用の眠気ででほとんど起きていられなくなるまで続いた。

次は向精神薬。11/26の骨髄移植に伴う絶食から続きずっと何も食べられないまま2ヶ月が過ぎようとしていた。何かを胃に入れていなくても嘔吐し、緑色の胆汁まで吐き出す始末。腹と脚の痛みが引く気配は全くなく、食事どころか飲み物も喉を通らない。点滴から水分は補えても栄養は十分に得られず、もともと移植で減っていた体重もまたさらにじわじわと減っていき、とうとう43kgにまで落ち込んだ。

ここから回復できる気がしない。フェンタニルの眠気と、八方塞がりに気づいてしまった無力感が相乗効果であらゆる気力を削り、一日が恐ろしいほど早く進むようになっていた。今までに自分が経験した気分の落ち込みとは明らかに違う。これは抑鬱状態というやつだと直感した。

原因は、なすすべなく自分が着実に死へ向かっていることを実感させられていることだと判断した。食事を少しでも取れれば体力と気力が回復していく。しかし食事をとるには気力が必要だった。金を稼ぐための金が足りない状態だ。気力があれば嘔吐することも少ないということをこの絶食以降の数週間で学習していた ここで向精神薬を使うことを思いついた。自分ではどうしようもないなら、外からの力を借りればいい。

向精神薬についての知識はほとんど持っていなかったので、主治医に素直に「食事をするだけの気力があれば気力も体力も回復させられますが、金を稼ぐための金が足りない状態です。食事をするだけの気力を薬でどうにか作り出せないですか」と聞いた(頭いい人には説明なしで隠喩が伝わるのでめちゃくちゃ楽)。すると麻薬のときの渋りようとは大違いで、次の日には25mgのジプレキサが処方された。寝る前に1錠。制吐作用もあるらしい。

次の日。寝起きの気分が悪くない。それから隣の病床の患者のお父さんにいただいた1きれのバウムクーヘンを吐かずに完食し、それを皮切りに少しずつ食事量を増やしていった。子供の夜泣きも叫び声も寛大な心で受け入れられるようになり、歯を磨き、ひげを剃ろうと思えるようになった。ちなみにそれまで何も食べていなかったので、歯はめちゃくちゃきれいだった。

向精神薬(麻薬も向精神薬のひとつ)を一度でも使うと人格が変わってしまうとか言う人がいるが、きっとそれは薬の種類と量によるのだろう(そもそもその人格とやらも非常に曖昧で、薬を飲む前後で簡単に比較できるようなものでは決してない)。少なくとも僕の体とフェンタニルとジプレキサではそのようなことは起こっていないと思う。起きていられないほどの量のフェンタニルを2週間ばかり入れても、それが抜けたあとも変わらず僕は僕だったと思う。相違点はいくら考えてもない。強いて言えば経験値の違いだろうか。「いかに素人の評判が悪い薬剤でも、必要ならば迷わず使ってみるのがよい」という経験を得た。

余談:母は向精神薬を飲み続けて亡くなった(もともとの精神病の症状を向精神薬で抑えきれず自殺してしまったのが真だろうが、あの人は変なバイアスを持っているのでそう解釈する)友達の記憶が強く残っていて、精神科、心療内科、向精神薬などのカテゴリを毛嫌いしていたが、信頼する医師が僕に処方した向精神薬はすんなり受け入れた。しかし僕が通っていた心療内科には未だに根拠のない不信感を募らせているようだ。本当に面倒臭い。自然派で反原発派で反現代医学派の親なんて…!(これでも最近は丸くなりました)